こんにちは!注文住宅業界歴6年、きのぴーです。
坪単価とは坪あたりの建物価格のこと。
建物のおよその価格を知るには、とても便利な目安です。
ここで問題です。坪単価50万円の工務店と、坪単価60万円の工務店、どちらが安く家が建つでしょうか?
答えは当然、坪単価50万円の工務店!
と思いきや、実はそうではない場合もあるのです。
この記事では、坪単価の仕組みと、目安にする場合に注意したい点を詳しく解説します。
坪単価とはなにか?
広告などでよく目にする「坪単価50万円より〜」「平均坪単価60万円」などの表記。
単に「坪50万円」「坪60万円」と言われることもあります。
建物価格の目安になる坪単価とは、「延べ坪あたりの建物本体価格」のこと。
以下の式で表します。
建物本体価格÷延べ坪(延べ床面積)=坪単価
「1坪」は畳2畳分、約3.3㎡の広さ。
延べ坪は、延べ床面積を坪に換算したものになります。
延べ床面積は建物の床面積の合計。
2階建ての建物であれば、1階と2階の床面積の合計です。
建物本体価格は、新築の場合なら建物本体の工事費です。
建物本体価格1,800万円、延べ30坪(約99㎡)の家なら、坪単価は1,800÷30=60万円、と計算します。
坪単価の落とし穴とは?
坪単価は住宅会社の価格帯の比較に便利です。
また「坪単価70万円目安のハウスメーカーで延べ40坪の家を建てたら、70×40=2,800万円ぐらいかかる」など、予算の目安を知ることもできます。
しかし、坪単価で計算した予算と実際に見積もりしてもらった工事費がかけ離れてしまったというケースもよくあります。
これは、どんな原因で起きるのでしょうか?
坪単価は、建築基準法上の床面積などと違って、明確な算出方法が決められているものではありません。
ハウスメーカーや工務店は独自にルールを決めて算出しています。
会社によって、含めるもの、含めないもの、面積の算出基準などが異なります。
また建物の規模や設計なども、坪単価に影響を与えます。
坪単価という目安には、どんな注意点や特徴があるかを見てみましょう。
【坪単価についての注意したいポイント】
延べ坪の設定には「延べ床面積」と「施工面積」がある
坪単価の算出に使う延べ坪は、大きく分けて「延べ床面積」の場合と、「施工(工事)面積」の場合があります。
延べ床面積は、外壁で囲まれた床の面積。
通常、玄関ポーチ、テラス、バルコニーなど外部の付属物は含まれません。
また、吹き抜けや一部小屋裏収納の面積なども含まない場合があります。
しかし実際にはその部分も、施工を行いコストがかかっているので、実際に施工する面積という意味で「延べ床面積」にポーチやテラス、吹き抜けなどの面積をプラスした「施工面積」を、坪単価の算出に使っている住宅会社もあります。
建物本体価格が同じなら、面積が大きい方が坪単価は安くなります。
施工面積は延べ床面積より大きくなるので、施工面積で計算している会社の方が、坪単価は安く算出されます。
例)
建物本体工事費 2400万円
延べ床面積40坪 / 施工面積42坪(延べ床面積に玄関ポーチとテラスを追加)
2400万円÷40坪=坪単価 60万円
2400万円÷42坪=坪単価 約57万円
この例では、坪単価に約3万円の違いが出てきます。
建物本体価格に含めるものの設定は住宅会社によって異なる
通常、建物本体価格(建物本体工事費)には古家の解体工事、伐採抜根工事、外構工事費、敷地の条件によって変わってくる地盤改良費用や水道などの引き込み工事などは含まれません。
しかし照明器具、造作家具、エアコン、シャッターなど細かい部分になると、会社によって含む場合も含まない場合もあり、設定は色々です。
住宅会社としては、なるべく坪単価は安く見せたいもの。
ときには、一般的に必要な設備まで除外している場合もあります。
坪単価に含まれないものが多いほど、実際の工事費に別途項目として追加されるものが多くなります。
また「坪単価60万円より〜」などの目安を算出する時の設備などのグレード(価格帯)も、住宅会社によって異なります。
実際に建築する時に、坪単価の設定より高価格帯の設備や材料を使えば、目安の坪単価では収まらなくなります。
小さい家の坪単価は割高になる
坪単価を使って建物本体価格を計算すると、建物本体価格は常に面積に比例することになります。
しかし、実際の住宅の工事費は必ずしも面積には比例しません。
通常規模の住宅であれば、面積の大小に関わらず、キッチンやお風呂は1箇所、トイレは1~2箇所です。
キッチンやお風呂などの設備は絶対に費用がかかる部分なので、小さい家では設備費の比重が大きくなり、面積が大きい家より坪単価が割高になります。
同じ延べ床面積でも設計が坪単価を左右する
同じ延べ床面積であっても、設計によって坪単価が変わってきます。
- 平屋
30坪の平屋と、1階、2階がそれぞれ15坪の総2階建ては同じ延べ床面積ですが、平屋の基礎と屋根の面積は、総2階建のおよそ2倍になります。
設備と同様に、基礎や屋根もコストがかかる部分であるため、平屋の坪単価は総2階建に比べてかなり割高になります。
同様に、1階に比べて2階の面積が小さい建物も、総2階建に比べると坪単価が割高になります。
- 複雑な形状の家
凹凸の多い複雑な形状の家は、箱型のシンプルな家に比べて坪単価が高くなります。
凹凸が多いと、外壁の面積も増え、屋根、壁など全般的に収まりが複雑になり、施工の手間がかかるためです。
- 部屋数の多い家
部屋数の少ないオープンな間取りに比べて、部屋数の多い家は、ドアなどの建具や間仕切り壁が増えるため、坪単価が割高になります。
- 分離型の2世帯住宅
キッチンやお風呂、トイレを複数設ける2世帯住宅は、同じ広さの普通の住宅に比べて坪単価が高くなります。
以上からわかるように、坪単価を目安にしたり比較したりするときは、設定条件に注意が必要です。
算出基準が大きく異なる住宅会社の坪単価を単純に比較しても意味がない場合があります。
また、自分が建てようと思っている家となるべく近い規模や設計の家の坪単価を参考にしましょう。
大きく条件が異なる家を参考にしていると、実際に見積もりをお願いしたら全く違う金額が出てきた、ということにもなりかねません。
坪単価に含まれない費用の予算も組んでおく
坪単価はあくまでも建物本体価格の目安。
家づくりにはそれ以外にも色々な費用がかかります。
坪単価だけで予算を組んでしまうと、必ず予算オーバーになってしまいます。
一戸建て注文住宅の場合、およその予算を組む段階では、本体価格の2~3割ぐらいの費用を見込んでおきましょう。
建物本体価格に含まれない項目には、以下のようなものがあります。
【建築本体価格に含まれないもの】
*建築の依頼先、敷地状況、建築条件などにより、異なる場合があります。
- 建物本体工事費に含まれない別途工事費
- 解体・伐採抜根工事(敷地内の古家の解体や、木を切ったり抜いたりする費用)
- 地盤改良工事(地盤が軟弱な場合の改良費)
- 外構工事(門扉、塀、カーポート、植栽などの費用)
- 引き込み工事(上下水道引き込み工事、水道負担金、インターネット回線引き込み工事など)
- 調査・設計関連費用
- 敷地測量費(測量図がなく、敷地の形状が不明瞭な場合に必要な測量費用)
- 地盤調査費(基礎の仕様を決定するために必要な調査費用)
- 設計・監理料(設計事務所に設計や工事監理を依頼する費用)
- 建築確認申請費用(建築前に行う建築確認申請に必要な費用と手数料)
- 税金・登記関連費用
- 登録免許税(土地や建物の登記の際に支払う税金)
- 登記手数料(登記を司法書士に依頼する場合の手数料)
- 印紙税(契約書を交わす際に必要な税金)
- 不動産取得税(土地や建物を取得した時に支払う税金)
- 固定資産税・都市計画税(毎年1月1日時点での不動産所有者が支払う税金)
- ローン・保険関連費用
- 住宅ローン事務手数料(住宅ローン借入れの際に金融機関に支払う手数料)
- 団体信用生命保険(住宅ローン借入者が加入する生命保険)
- 火災保険料(住宅ローンを借入れる場合は加入が義務付けられる)
- その他
- 現場関連費用(地鎮祭、上棟式、ご祝儀、お茶菓子、近隣挨拶など)
- 家具・カーテン・家電代(新規購入の家具、カーテンなど)
- 引越し費用(引越し代や仮住まい費用など)
まとめ
坪単価とは何か? ご理解いただけたでしょうか。
坪単価は便利な「ものさし」ではありますが、やみくもに使うと、間違った「ものさし」になってしまうこともあります。
特徴を理解して有効に活用しましょう。