こんにちは!注文住宅業界歴6年、きのぴーです。
「家の工法はたくさんあって正直どれがいいかわからない」
そう思っている方はいませんか。
たしかに家の工法の種類は複数あってなかなか分かりづらいかと思います。
しかし、分かりづらいからと言ってうやむやにするのはいけません。
特に家を建てる上で生活に直結するのが断熱です。
家の断熱工法の一つである床断熱や基礎断熱は床下空間をどう使うかによって室内環境が変わってきます。
今回は家の断熱工法の一つである「基礎断熱とは何か」「基礎断熱のメリット・デメリット」「基礎断熱を取り入れる時に押さえておきたいポイント」についてご紹介していきます。
基礎断熱の仕組みと床下断熱の違い
基礎断熱とは?断熱性・気密性の確保がしやすい
基礎断熱とは?
基礎断熱とは基礎の外周に断熱材を張り、床下の通気孔を塞いで気密性を施した工法です。基礎断熱は地熱を利用する特徴があり、床下を室内と同じ環境にする断熱方法になります。
地熱とは簡単に言うと地球内部の熱のことを言い、年間を通じて温度はほとんど変化しません。
地熱は、夏は外気より低く、冬は外気より高いため冷暖房の負荷を低減させる効果があります。
1階の床下に断熱材を敷き詰める床断熱が一般的ですが、これは床下と床上の空間を分けた断熱方法です。
そのため床下は通気性を良くするために通気孔を設けますが、その分床下の中は寒くなります。
では、「基礎断熱の床下環境」はどうなのでしょうか。
基礎断熱の場合、床面の表面温度は室温よりも約3〜4℃前後低いため、床断熱の方が体感温度として優れていますが、気密性の高さから床下暖房と組み合わせる事で安定した温熱環境を確保することができます。
後ほど基礎断熱の優れている点を具体的にご紹介していきますが、ポイントあげるとすると下記になります。
- 床下暖房を組み合わせる事で快適な温熱環境を確保
- 高価な床暖房が不要なためコストパフォーマンスに優れている
- 施工精度が高く信頼性がある
- 床下空間を収納やボイラーなどに有効活用できる
- 安定した湿度を維持し床下環境が良好なため耐久性に優れる
- メンテナンス性に優れている
では、基礎断熱のメリット・デメリットについて確認していきましょう。
基礎断熱のメリット・デメリット
基礎断熱のメリット
床下暖房を組み合わせる事で快適な温熱環境を確保
基礎断熱のメリットは床下の空気を暖める事ができる点です。
そのため基礎断熱は、床下暖房と組み合わせる事で最大の効果が発揮されます。
基礎断熱は床下の通気孔をふさぎ、基礎外周に断熱材を張っているため気密性と断熱性に優れています。
床下暖房なしの基礎断熱は、床面の表面温度が床断熱よりも低いですが、床下暖房で床面の表面温度を室内より1℃前後高い状態にする事で低温輻射による快適な温熱環境を得る事ができます。
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高価な床暖房が不要なためコストパフォーマンスに優れている
基礎断熱の仕組みとして、熱容量が大きい基礎の立上りコンクリートや防湿コンクリートの蓄熱層が安定した温熱環境を与えてくれます。
また、地面に接する場所に断熱材を設けない場合は基礎下部から地熱を得る事ができるため、床暖房の設置は不要です。
床暖房の設置の必要性がないことを考慮すると、基礎断熱はコストパフォーマンスが高い工法と言えます。
さらに、蓄熱量が多いことで温熱環境は安定し、床暖房よりも光熱費の節約にもなります。
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施工精度が高く信頼性がある
基礎断熱の施工は床下に通気孔を設けないため気密性の確保がしやすく、基礎外周に断熱材を張って断熱性能を確保します。
基礎断熱は床断熱と比べて施工性が良いと言われているのは、気密工事や床の断熱工事がないからです。
気密工事と床の断熱工事が不要なため、施工が容易で施工精度も高く、信頼性がもてる工法です。
床下空間を収納やボイラーなどに有効活用できる
基礎断熱は暖房効果を高めるためになるべく基礎の立上りを少なくする工夫がされています。
床断熱の場合、基礎の立上りが多く迷路のように入り組んでいますが、基礎断熱は比較的広い空間を得る事ができるため、床下空間を収納スペースやボイラーなど有効に活用する事ができます。
床断熱でも床下収納というものがありますが、幅60cm〜90cm、深さ30cm〜45cmほどの容量と限られているので基礎断熱で利用できる床下空間よりも狭くなります。
安定した湿度を維持し床下環境が良好なため耐久性に優れる
基礎断熱は気密性が高いため、安定した床下環境を維持する事ができるメリットがあります。
通常床下空間は湿度が高くなりやすい場所ですが、基礎断熱では梅雨時であっても相対湿度(湿度)70%前後にする事ができます。
湿度75%以下の環境は腐朽菌(カビ)の発生を抑え、床下にある木材が腐食するリスクが減り耐久性が向上します。
また、乾燥状態を維持する事ができるためシロアリの被害が受けにくいのもメリットです。
そのため基礎断熱は防腐・防蟻処理の必要性が少ないとも言えますが、もし防腐・防蟻処理を行わない場合は、土台の材種にヒノキやヒバ、カラマツ。
柱・間柱・筋交い・火打土台・大引・束などの材種はスギ、ヒノキ、ヒバ、カラマツなど腐食や虫害に強い木材を使用する必要があります。
メンテナンス性に優れる
基礎断熱の床下空間は広いため、配管や電気配線は床下を通りメンテナンス性が優れています。
また、基礎コンクリートが断熱材と仕上げモルタルなどで保護されているため、酸性雨などによる中性化やコンクリートの凍害を防止します。
給排気・給湯・暖房などの各種配管の凍結の心配もなく不凍栓が不要です。
基礎断熱のデメリット
基礎断熱のみでは意味がない!暖冷房の立ち上がりが遅い
基礎断熱は基礎・防湿コンクリートの蓄熱量が大きいので、床断熱に比べると暖冷房の立ち上がりが遅いデメリットがあります。
これは熱が溜まりきってしまえば安定しますが、それまでは熱が吸い取られてしまいなかなか暖かくなりません。
基礎断熱は、床下暖房なしだと床面の温度は室温よりも低くなるため室内環境が悪くなります。
基礎断熱を最大に活かすには床下暖房と組み合わせる事が前提です。
床の表面温度を室温よりも1℃前後高くする事で快適な低温輻射暖房が得られます。
基礎断熱のコストは床断熱より若干高い
施工面では床断熱よりも基礎断熱の方が容易なため工事手間の費用は減ります。
しかし、材料費がかかるため総額として見るとコストがアップしてしまうデメリットがあります。
基礎断熱を採用する場合は、できるだけ予算を調整して取り入れていく事が重要です。
硬質ウレタンフォームがシロアリの食害を受けやすい
基礎断熱のデメリットで一番気をつけなければいけないのがシロアリです。
基礎断熱に使われる発泡系板状断熱材(プラスチック系断熱材)、特に硬質ウレタンフォームはシロアリの食害が受けやすいリスクがあります。
風除室や犬走りなどコンクリートに挟まれた場所は湿気が溜まりやすくシロアリが繁殖しやすい場所のため被害も多いです。
基礎断熱に使われる発泡系板状断熱材(プラスチック系断熱材)が蟻道となり土台や柱などに侵入させやすくなるため、通常発泡系板状断熱材(プラスチック系断熱材)を張る時は基礎内に張るのが基本です。
また、シロアリ被害のリスクを減らすためにも防蟻処理の対策が必要です。
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基礎断熱を取り入れる時に押さえておきたいポイント
基礎断熱のデメリットであるシロアリの対策
上記で基礎断熱はシロアリ被害を受けやすいデメリットがあるとお伝えしました。
ここでは、基礎断熱でもシロアリ被害を受けにくい対策についてご紹介していきます。
まず、シロアリを寄せ付けないように防蟻処理を行っていく必要がありますが、薬剤の散布を避けたいという場合は、食害の恐れがある場所のみ部分的に基礎内断熱にする対策があります。
また、薬剤の散布ではなく、防蟻シートや防蟻断熱材を使うのも一つの方法です。
防蟻シートや防蟻断熱材はシロアリの薬剤が練りこまれたもので、薬剤の成分が土中に流れたり、空気中に拡散したりする恐れがなく効果も長く期待ができます。
高性能グラスウール32Kや値段が高価ですが発泡炭化カルシウム、発泡ガラスなどの断熱材を使用するとシロアリの食害を受けにくくさせます。
基礎断熱と組み合わせる床暖房の種類
基礎断熱は床下暖房と組み合わせる事が前提です。
では、床下暖房にはどんな種類があるのでしょうか。
床下暖房は予算と好みによって変わりますが、比較的ローコストで導入できるのがFF式ストーブ(強制給排気式のストーブ)を床下に設置して温風を床下に押し流す方法です。
床下に流れる温風が床下全体に行き渡り、床面の表面温度を室温の約1℃高い状態に保つ事で室内が快適な環境になります。
ただし、FF式ストーブは給排気を外部で行うため、ダクトが常につながっている必要がありストーブの位置を容易に動かす事ができないデメリットがあります。
「床下にストーブを置くのは心配だ」という方は床下専用温水パネルラジエーターやエアコン、深夜電力蓄熱暖房機を設置するといいでしょう。
エアコンは寒冷地の場合、床下専用のものもあります。
床下暖房に計画換気を取り入れると冷暖房のコストが削減できる
床下暖房をもっと効率よく使うために計画換気を取り入れるのがおすすめです。
換気システムの排気ダクト口から床下の空気を吸い込み家の外に排気されることで床下空間が負圧になります。
室内の暖かい空気は床に設けられたガラリから床下に引き込まれていき、結果的に低コストで換気と暖房を使う事ができます。
また、地域によっては基礎立上り面に専用の断熱・気密換気口を設ける事で夏を快適な空間へとさせる事ができます。
断熱・気密換気口を利用すれば北側や東側の涼しい空気を換気口から取り込み、25℃前後の床下温度でさらに空気が冷やされ室内へと入り快適な室内環境にさせる事ができます。
まとめ
ここまで基礎断熱のメリット・デメリットや取り入れる時のポイントについてご紹介してきました。
基礎断熱のみではあまり効果が発揮されませんが、床下暖房と組み合わせる事で快適な環境を作る事ができます。
基礎の立上りが少ないためメンテナンス性に優れ、床断熱よりも気密性が確保しやすいところから湿度が70%前後で保つ事ができ、木材などの耐久性が優れているメリットがあります。
ただし、メリットだけ見るのではなくしっかりとデメリットも見ていかなければいけません。
特にシロアリは被害にあうと修復するにも大規模な工事が必要になる可能性があります。
基礎断熱を採用する時は、デメリットに対してどう対策していくかしっかりと計画を立てて取り入れていきましょう。